「同じコンセプトで複数のデザイン案がある。どれを出願すべき?」――そんな時に役立つのが関連意匠の活用です。まず、本体となる意匠(基礎意匠)を軸に、似たデザインを別出願として段階的に保護できます。さらに、シリーズ展開や年次改良が前提の製品とも相性が良く、模倣対策とブランド統一の両立に有効です。
関連意匠とはの基本(まず押さえる要点)
- 基礎意匠に類似するデザインを、同一出願人が関連意匠として登録できる仕組みです。
- 改正後は、関連どうしの連鎖(本意匠 → 関連A → 関連B …)も可能になりました。
- 出願できる期間:基礎意匠の出願日から10年以内です。
- 存続期間:満了日は基礎意匠の出願日から25年であり、各関連の出願日ではありません。
制度の定義や運用の全体像は、特許庁「関連意匠制度」の解説が分かりやすいです。なお、図面作成や審査の考え方を詳しく知りたい場合は、意匠審査基準も参考になります。
どんなときに使う?(つまり活用シーン)
- 同一シリーズ商品(例:化粧品ボトルのキャップ形状違い、ラベル違い)を守りたいとき。
- 年次改良・派生モデルを段階的に登録し、シリーズ全体を一貫して保護したい場合。
- 一方で、模倣リスクが高い製品については、あらかじめ関連意匠として先手を打つのが有効です。
出願・運用の実務ポイント(さらに深掘り)
- タイミング設計:基礎意匠の出願日から10年以内に計画的に追加出願を行います。つまり、ローンチ計画や改良サイクルに合わせて、年次で「追加出願枠」を確保しておくと安心です。
- 同一出願人要件:母体となる意匠と関連は同一出願人が前提です。したがって、譲渡や共同出願の場合は名義の整合に注意しましょう。
- 連鎖の設計:関連どうしの類似でも登録可となりました。したがって、シリーズ全体の「類似関係」を設計図にし、抜け漏れを防ぐことが大切です。
- 基礎との関係管理:審査では基礎意匠の登録状況や類似関係がチェックされます。つまり、家系図のように「基礎」→各関連の関係を整理しておくと、後の確認がスムーズです。
- 満了日の把握:満了は基礎の出願日から25年であり、関連の出願日基準ではありません。つまり、最後の関連意匠だけ長く残るわけではない点に注意が必要です。
図面・先行意匠の確認(なお見落としがち)
言い換えると、図面の“差異の出し方”と“類似の一貫性”が評価の鍵です。さらに、先行意匠を把握しておくと、重複や拒絶リスクを回避できます。検索には、J-PlatPat(意匠検索)が便利です。
事例でイメージ(たとえば)
- 化粧品ボトル:胴部は同様で、キャップ形状やエンボスパターン、ラベル窓形状を変えた派生を段階的に登録。
- スマートフォン:カメラ島の輪郭、ボタン位置、ベゼル幅の違いなどをカバーし、統一感を保ちながら差別化。
よくある落とし穴(だから要注意)
- 期間切れ:「基礎意匠の出願日から10年」を1日でも超えると、関連の出願はできません。
- 属さない派生:シリーズ内で類似が言えない形状差は関連にできません。したがって、主要な変更軸(正面輪郭・断面形状・装飾パターン等)を事前に整理しておきましょう。
- 満了日の誤認:関連の満了日は各関連の出願日基準ではないため、誤解しやすい点です。
前回までのおさらい・関連記事
シリーズ展開のデザインも、まとめて守りたい方へ。
意匠群の設計(類似関係の組み立て・出願タイミング・台帳化)まで、元技術者の弁理士が伴走します。
まとめ(したがって、計画が要)
この制度は、シリーズ製品の「次の一手」を見据えた守りの布陣です。したがって、発売前後の改良やバリエーションを見通して、10年のウィンドウを戦略的に活用しましょう。さらに、早めの設計と調査で「後から守れない」リスクを防ぐことができます。
ミレニア弁理士法人では、化学、バイオ、半導体関連の特許出願を主に、機械、電気電子、プログラム関連の特許出願も取り扱っています。
また、意匠・商標の保護戦略、先行技術調査、侵害調査、無効化調査など、知財活動を総合的にサポートいたします。
シリーズ展開や改良デザインの出願を検討されている方は、ぜひ一度ご相談ください。


