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第4回|部分意匠とは?製品の“一部”だけをデザインとして守る方法

2025年10月24日 | ブログ

製品全体ではなく、一部分だけを模倣される――そんな悩みはありませんか。例えば、アクセサリーの要部、香水瓶の胴部又はキャップ、バッグの持ち手など、印象を決める要は意外と「部分」にあります。そこで今回は、デザイン戦略で強力な武器になる部分意匠制度を、実務の視点でわかりやすく解説します。まず概要を押さえ、次に図面の描き方、さらに活用シーン、そして失敗しやすい点とチェックリストへと進みます。

  • 部分意匠とは
  • 図面の描き方(実線/破線)
  • 活用シーンとメリット
  • 関連意匠・画像意匠との使い分け
  • 出願のコツ(権利範囲設計)
  • ありがちな失敗例
  • 出願前チェックリスト
  • まとめ・ご相談

部分意匠とは

部分意匠は、物品の一部の形状・模様・色彩について権利化する制度です。つまり、製品全体ではなく、ブランド性を生む要素だけを狙って守れます。結果として、模倣側が「そこだけ似せる」手口に対し、より実効的に対応できます。

たとえば、香水瓶の胴部又はキャップ、家電の操作ボタン周り、バッグの持ち手、スニーカーのソールなどが典型例です。新規性・創作性の判断は“部分”に対して行われるため、特徴的な部分のデザインを保護したい場面で有効です。

図面の描き方(実線/破線)

保護対象を明確にするため、図面では保護する部分を実線で、それ以外を破線で描きます。ここでの線の使い分けが、実務上の明暗を分けます。というのも、実線で囲った範囲がそのまま権利のコアになるからです。

  • 例1:ボトルを破線、キャップのみ実線(=キャップ形状を保護)
  • 例2:スニーカー全体を破線、ソールのみ実線
  • 例3:スマホ本体を破線、画面縁のR形状のみ実線

なお、実線範囲が曖昧だと、後で侵害立証が難しくなります。したがって、視覚的に一貫した面とエッジが伝わるように、図面の角度(6面図+必要に応じて斜視図)を整えることが大切です。

活用シーンとメリット

  1. シリーズの共通モチーフを守る たとえば、ペットボトルの胴部形状、人気バッグのハンドル形状を横展開する場合、核となる部分を押さえることでシリーズの統一感を法的に支えられます。
  2. ピンポイントでの模倣抑止 模倣側が似せやすいのは”特徴的な部分”。ゆえに、その部分を直接カバーできることは、実践的な抑止力につながります。

関連意匠・画像意匠との使い分け

さらに、関連意匠(バリエーション展開を束ねる)と組み合わせると、デザインファミリーを保護できます。一方、操作画面やUIなどの画像意匠は、ソフトウェアを開発する企業にとっては重要です。つまり、「部分」×「関連」×「画像」の合わせ技で、立体・平面・バリエーションを総合的に囲い込めるのです。

出願のコツ(権利範囲設計)

  • どこまでを実線に含めるか:ペットボトルのキャップ“だけ”か、ネック上部までか、胴部か。境界の切り方で侵害の当たり方が変わります。
  • 関連意匠制度も活用:デザインラインナップを関連意匠で展開。結果として、デザイン回避を難しくできます。
  • 公開戦略(秘密意匠):発売タイミングとの整合がシビアなら、特許庁制度解説を参照しつつ秘密意匠を検討。

ありがちな失敗例

  • 実線が広すぎる/狭すぎる:広すぎると無効リスク、狭すぎると実効性が落ちます。
  • 破線の不統一:コマごとに破線の扱いが揺れると、保護範囲が曖昧に見えます。
  • 関連意匠の取り逃し:バリエーションを後出しにして、新規性でつまずくケース。

出願前チェックリスト

  1. 保護したい核の要素は、6面図で一致しているか。
  2. 比較対象(自社旧型・他社品)に対する差異点は視覚的に明確か。
  3. 関連意匠画像意匠の併用計画はあるか。
  4. 発売計画・展示会・SNS投稿などと公開タイミングは整合しているか。

まとめ・ご相談

結局のところ、部分意匠は“ブランドの顔”を点で押さえる制度です。だからこそ、図面設計と出願戦略が重要になります。まずは現行デザインの“核”を棚卸しし、回避設計への当たりの強い権利を一緒に設計しましょう。

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参考:J-PlatPat(意匠公報検索)特許庁:意匠制度の概要