~仮想空間と知的財産の最前線~
メタバースでは、ショッピング街や展示空間での活動が急速に広がっています。アバター同士の交流や、ブランドによる新商品の発表も増えてきました。
一方で、こうした新しい活動の広がりとともに、知財に関するトラブルも生まれています。実際、当事務所にも次のようなご相談を多くいただきます。
「仮想空間のロゴやデザインは、現実と同じように守れるのですか?」
そこで本記事では、著作権・意匠・商標・不正競争防止法の4つの視点から、メタバースでの知的財産保護の基本をわかりやすく整理します。
1.著作権:仮想アイテムの“創作物”は誰のもの?
アバターの衣装や仮想建築、UI、ワールドデザインなどは、創作性があれば著作物として保護されます。つまり、それを制作したクリエイターや企業に著作権が発生します。
したがって、無断利用は差止請求や損害賠償の対象となる場合があります。さらに、AIツールを使って生成した作品では、人がどのように創作へ関与したかを記録しておくことが重要です。
2.意匠権:デジタルデザインも登録できる時代
2020年の意匠法改正により、画像意匠や建築物意匠も保護対象になりました。これにより、メタバース内のGUIやアイコン、店舗内装、デジタル家具や衣装も意匠登録で守ることが可能です。
たとえば、仮想展示会のブースや、アバター用のファッションなども登録対象に含まれます。現実世界と同じく、デジタル上のデザインも企業の資産として扱う時代になっています。
参考リンク:特許庁|意匠制度の概要
3.商標権:仮想商品・サービスの指定とブランド戦略
さらに、商標の世界でも変化が進んでいます。メタバース上でロゴやブランド名を使う場合は、現実の商品区分だけでなく、仮想商品やデジタルサービス向けの区分(例:9類・35類)も指定する必要があります。
海外では、NikeやGUCCIなどがいち早く仮想商品向けの商標を出願しています。つまり、現実と仮想の両方でブランドを守る時代が到来しているのです。
関連記事:展示会での技術開示と知財リスク ― オープンクローズ戦略
4.不正競争防止法:商標がなくても救済できる場合
一方で、商標登録がなくても救済できる場合があります。他人の有名な名称やロゴを不正に利用して混同を起こす行為は、不正競争防止法の対象となることがあります。
たとえば、現実で知られた会社名を仮想空間で無断使用するケースです。また、似た名称で出店して信用を利用するような行為も問題になります。
ただし、この場合は周知性の立証が必要です。そのため、日ごろから広報や実績をきちんと記録しておくことが大切です。
5.まとめ:仮想空間でも“先手の権利化”が鍵
結論として、メタバースは「もう一つの現実」と言える存在になっています。だからこそ、デジタルの見た目(意匠)、名前(商標)、作品(著作権)、信用(不正競争)を現実と同じように整備することが重要です。
つまり、仮想空間で活動する際は、早めに権利を取得し、リスクを最小限に抑えることがブランド価値を守る最良の方法です。
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・AIと著作権 ― 生成AI時代の創作の境界線
・展示会での技術開示と知財リスク ― オープンクローズ戦略
参考リンク: 特許庁:意匠制度 / 経済産業省:知的財産の保護と活用
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