はじめに
「意匠権」とは、商品のデザインを守る権利です。しかし、多くの方は「家具やボトルの形を守るもの」というイメージをお持ちではないでしょうか。実際、改正前の意匠法では家具や家電などの動産に限定され、建築物や内装は保護対象外でした。
一方で、企業ブランドに直結する店舗デザインや建物外観は、模倣されれば大きな損害につながります。その結果、2019年の法改正(2020年施行)では、建築物や内装も意匠の対象に含まれるようになったのです。
改正前の限界とコメダ珈琲事件
改正前は、建物や内装を意匠で守ることができませんでした。つまり、店舗の雰囲気を模倣されても、意匠権では対応できず、不正競争防止法などを使うしかなかったのです。
その典型例が、かつて話題になったコメダ珈琲事件です。
事件の概要
コメダ珈琲店は木材を基調とした独自の外観・内装で全国展開していました。ところが和歌山で、極めて似たデザインを持つ「マサキ珈琲」が出店され、コメダは裁判所に差止を求めました。
フランチャイズ契約交渉の頓挫
実は背景には、フランチャイズ契約の交渉がありました。マサキ珈琲を運営する会社は当初コメダに加盟を希望しましたが、地域調整を理由に断られ、契約が頓挫。その後、似た内装で独自に開業したため、争いが生じたのです。
裁判での判断
当時は意匠法の対象外だったため、コメダは不正競争防止法で戦うしかありませんでした(参考:弁護士ドットコムニュース)。
改正後ならどうなる?
では、もしこの事件が改正後に起きていたらどうでしょうか。
答えは明快です。現在では建築物や内装も意匠登録可能です。
たとえば、
- コメダ珈琲のログハウス風外観
- 店舗内装の統一デザイン
これらを意匠登録していれば、不正競争防止法ではなく、意匠権侵害として直接主張できたのです。
👉 意匠の基本については、こちらの記事もご覧ください:意匠とは?商品の見た目を守る権利
企業にとってのメリット
意匠法改正により、企業は以下のメリットを得られます。
- ブランドイメージを強力に保護
店舗デザインや外観を模倣から防止。 - 投資の回収を容易に
建築や内装にかけたコストを知財として守れる。 - 模倣店対策の強化
不正競争防止法よりも明確な「意匠権」で権利行使が可能。
さらに、飲食チェーンやホテル、ショールームなど、空間そのものが顧客体験に直結する業種にとっては、競合との差別化を守る有効な手段になります。
実務での注意点
ただし、建物や内装の意匠登録を活用する際には注意点もあります。
- 新規性が必要:オープン前に出願することが望ましい。
- 独自性の説明:ありふれた内装ではなく、創作性を示す必要がある。
- 明確な図面や写真:登録の際には具体的な資料が不可欠。
(参考:特許庁「意匠制度の概要」)
まとめ ― ミレニア弁理士法人へのご相談を
コメダ事件は、改正前の制度では守れなかった「空間デザイン」の重要性を示しました。
しかし今は、意匠法によって建物や内装も守れる時代です。
なお、ミレニア弁理士法人は、化学・半導体・化粧品などの特許分野を専門としております。
そのうえで、特許だけでなく意匠や商標まで総合的にサポートすることで、研究成果や製品デザインをトータルで守ることが可能です。
👉 ミレニア弁理士法人では、建築物・内装デザインを含む意匠登録のご相談を承っています。
「自社のデザインを守りたい」「模倣店が心配」といったご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせフォームからご連絡ください。