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OEM製造と特許リスク|海外で作れば特許権侵害は免れるのか?

2025年9月23日 | ブログ

はじめに

最近、OEM製造をしている会社の経営者の方から次のような相談を受けました。

「日本で製品を開発して、中国で生産します。生産した製品を中国から日本へ輸出して、日本で販売します。他社の特許を侵害していないか、調査して欲しい。」

一見するとシンプルな相談に思えるかもしれません。製品を日本で販売する以上、日本特許の調査は当然です。しかし、話をよく伺うと意外な誤解が潜んでいました。


製造だけなら中国特許は不要?

相談者の方は次のように続けました。

「中国は製造だけなんです。販売は日本なので、中国の特許は関係ないですよね?」

ところが、この考え方には大きな落とし穴があります。
実は「製造だけ」であっても、中国特許を侵害する可能性があるのです。

特許の世界では、製造・使用・販売・譲渡などを総称して「実施」と呼びます。
つまり、製造行為そのものが特許権侵害に該当するのです。中国国内で製造を行えば、それは中国特許の「実施」となり、中国の特許権者から差止めや損害賠償を請求されるリスクが発生します。

この点を知らずに「海外で作って日本で売るなら安心」と考える経営者は少なくありません。特にOEM製造を利用する企業ほど、この誤解には注意が必要です。


OEM製造に潜むリスク

OEM製造とは、自社で設計・開発を行い、その製造を他社に委託する仕組みです。コスト削減や生産能力の確保のため、中国など海外工場を利用するケースは非常に多く見られます。

一方で、この方法には次のようなリスクが潜んでいます。

製造国の特許リスク

製造委託先が海外であっても、その国に特許が存在すれば侵害に該当する可能性があります。さらに、製造会社だけでなく、製造を依頼した委託元(日本企業)も責任を問われるリスクがあります。

輸出・輸入のリスク

中国で作って日本に輸出する場合、中国からの輸出行為と日本での輸入行為が発生します。輸出そのものを禁止する中国特許も存在し、日本に輸入した時点で日本特許の侵害が成立するケースもあります。

OEMだからといって免責されない

「製造は委託先がやっているから自分は関係ない」と考えるのは危険です。実際には、製造の指示や販売に関与していれば、委託元も侵害主体とみなされる可能性が高いのです。


起こり得るトラブルの例

  • 中国での製造差止め
     製造を始めた途端に「その技術は中国特許に抵触している」と警告を受け、製造ラインが止まる。納期が守れず、取引先に多大な損害が発生。
  • 輸出時の通関トラブル
     中国から日本へ輸出する際、特許侵害の疑いで税関により差し止められ、予定していた販売が不可能になる。
  • 日本での販売差止め
     日本で販売を始めたところ、日本特許権者から差止請求を受け、製品を回収せざるを得なくなり、大きな損失につながる。

これらはすべて、事前に調査しておけば防げたケースです。特許リスクを軽視した結果、事業そのものが立ち行かなくなる可能性すらあります。


事前調査の重要性

OEM製造を利用する際に最低限確認すべきなのは、大きく分けて次の二つです。

  1. 販売予定国(例:日本)の特許調査
     日本で販売するなら、日本特許を調べるのは必須です。
  2. 製造予定国(例:中国)の特許調査
     製造だけであっても、その国の特許に抵触していないか確認が必要です。

さらに将来的に販売を検討している国があれば、その国でも調査を行っておくと安心です。


OEM製造を活用する企業へのアドバイス

  • 「海外で作れば大丈夫」という思い込みは危険
  • OEM委託元も特許侵害責任を負う可能性がある
  • 製造国・販売国それぞれで特許リスクを確認すべき

知財リスクは「知らなかった」では済まされません。事後対応は費用も損害も大きくなります。早い段階で調査し、安心して製造・販売できる体制を整えることが、結局はコスト削減につながります。


まとめ

OEM製造はコストや生産能力の面で大きなメリットがありますが、特許リスクを軽視すると深刻な損害を招く恐れがあります。

  • 日本で販売するなら日本特許を調査する
  • 中国で製造するなら中国特許を調査する
  • 委託だからといって責任は逃れられない

「海外で作れば安心」という考え方は非常に危険です。

当事務所では、日本・海外の特許調査に対応しており、企業の事業展開に合わせたリスク分析をご提供しています。OEM製造や海外展開を検討されている企業様は、ぜひ早めにご相談ください。


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