製品全体ではなく、一部分だけを模倣される――そんな悩みはありませんか。例えば、アクセサリーの要部、香水瓶の胴部又はキャップ、バッグの持ち手など、印象を決める要は意外と「部分」にあります。そこで今回は、デザイン戦略で強力な武器になる部分意匠制度を、実務の視点でわかりやすく解説します。まず概要を押さえ、次に図面の描き方、さらに活用シーン、そして失敗しやすい点とチェックリストへと進みます。
- 部分意匠とは
- 図面の描き方(実線/破線)
- 活用シーンとメリット
- 関連意匠・画像意匠との使い分け
- 出願のコツ(権利範囲設計)
- ありがちな失敗例
- 出願前チェックリスト
- まとめ・ご相談
部分意匠とは
部分意匠は、物品の一部の形状・模様・色彩について権利化する制度です。つまり、製品全体ではなく、ブランド性を生む要素だけを狙って守れます。結果として、模倣側が「そこだけ似せる」手口に対し、より実効的に対応できます。
たとえば、香水瓶の胴部又はキャップ、家電の操作ボタン周り、バッグの持ち手、スニーカーのソールなどが典型例です。新規性・創作性の判断は“部分”に対して行われるため、特徴的な部分のデザインを保護したい場面で有効です。
図面の描き方(実線/破線)
保護対象を明確にするため、図面では保護する部分を実線で、それ以外を破線で描きます。ここでの線の使い分けが、実務上の明暗を分けます。というのも、実線で囲った範囲がそのまま権利のコアになるからです。
- 例1:ボトルを破線、キャップのみ実線(=キャップ形状を保護)
- 例2:スニーカー全体を破線、ソールのみ実線
- 例3:スマホ本体を破線、画面縁のR形状のみ実線
なお、実線範囲が曖昧だと、後で侵害立証が難しくなります。したがって、視覚的に一貫した面とエッジが伝わるように、図面の角度(6面図+必要に応じて斜視図)を整えることが大切です。
活用シーンとメリット
- シリーズの共通モチーフを守る たとえば、ペットボトルの胴部形状、人気バッグのハンドル形状を横展開する場合、核となる部分を押さえることでシリーズの統一感を法的に支えられます。
- ピンポイントでの模倣抑止 模倣側が似せやすいのは”特徴的な部分”。ゆえに、その部分を直接カバーできることは、実践的な抑止力につながります。
関連意匠・画像意匠との使い分け
さらに、関連意匠(バリエーション展開を束ねる)と組み合わせると、デザインファミリーを保護できます。一方、操作画面やUIなどの画像意匠は、ソフトウェアを開発する企業にとっては重要です。つまり、「部分」×「関連」×「画像」の合わせ技で、立体・平面・バリエーションを総合的に囲い込めるのです。
出願のコツ(権利範囲設計)
- どこまでを実線に含めるか:ペットボトルのキャップ“だけ”か、ネック上部までか、胴部か。境界の切り方で侵害の当たり方が変わります。
- 関連意匠制度も活用:デザインラインナップを関連意匠で展開。結果として、デザイン回避を難しくできます。
- 公開戦略(秘密意匠):発売タイミングとの整合がシビアなら、特許庁制度解説を参照しつつ秘密意匠を検討。
ありがちな失敗例
- 実線が広すぎる/狭すぎる:広すぎると無効リスク、狭すぎると実効性が落ちます。
- 破線の不統一:コマごとに破線の扱いが揺れると、保護範囲が曖昧に見えます。
- 関連意匠の取り逃し:バリエーションを後出しにして、新規性でつまずくケース。
出願前チェックリスト
- 保護したい核の要素は、6面図で一致しているか。
- 比較対象(自社旧型・他社品)に対する差異点は視覚的に明確か。
- 関連意匠・画像意匠の併用計画はあるか。
- 発売計画・展示会・SNS投稿などと公開タイミングは整合しているか。
まとめ・ご相談
結局のところ、部分意匠は“ブランドの顔”を点で押さえる制度です。だからこそ、図面設計と出願戦略が重要になります。まずは現行デザインの“核”を棚卸しし、回避設計への当たりの強い権利を一緒に設計しましょう。
ミレニア弁理士法人では、化粧品・家電・半導体・ソフトウェアUIまで、実務に即した部分意匠/関連意匠の伴走支援を行っています。まずはお気軽にご相談ください。
参考:J-PlatPat(意匠公報検索) / 特許庁:意匠制度の概要


