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なぜ「実施例の準備」で特許の強さが変わるのか

2025年11月4日 | ブログ

特許は、発明の内容を他人に再現できるように記載しなければなりません。特に化学・材料分野では、構造と効果の関係を示す「実施例」が不可欠です。実施例が十分でないと、サポート要件や実施可能要件を満たさず、出願が拒絶されたり、登録後に無効とされるおそれがあります。

サポート要件と実施可能要件のちがい

これらは似ていますが、目的が異なります。

  • サポート要件:クレームに記載した発明が、明細書の記載によって裏付けられているか。
  • 実施可能要件:明細書の記載を読んで、発明を実際に再現できるか。

つまり、「発明を支えるデータがあるか」「実際に作れるか」を審査官や審判官がチェックします。

特許庁公式サイト:実施可能要件・サポート要件

出典:特許庁「審査基準 第Ⅱ部 第2章 明細書等の記載要件」
https://www.jpo.go.jp/system/patent/gaiyo/kijun/kijun2.html

研究段階から意識したい3つのポイント

① 実施例の範囲を広げる

実施例は「一番うまくいった例」だけでは不十分です。上限・下限・代表例など、範囲全体をカバーするデータを取ることで、クレームを広く支えられます。

② 比較例を入れる

効果を際立たせるためには、比較例が有効です。たとえば、「成分Aを入れたとき/入れないとき」など、差が明確に出る設計をすると、進歩性を主張しやすくなります。

③ 再現性のある条件を記録する

温度、時間、pH、試料量など、他人が同じ結果を得られるように条件を記録します。測定方法は明確に記載しましょう。また、官能評価とその評価基準も、専門評価員(パネリスト)がどのように行ったか明確に書いておくことが重要です。

実施例が不足するとどうなる?

「広すぎるクレームなのに、実施例が一点しかない」場合、サポート要件違反になることがあります。特に、効果が数値的に示されていないと、「効果が一般化できない」として拒絶されやすい傾向にあります。

弁理士が関与すると変わるポイント

出願前の研究段階から弁理士が関与することで、どのデータを取ればサポート要件を満たすか、どの条件を記録すべきかをアドバイスできます。元技術者の視点で、実験設計から特許戦略までトータルで支援します。

まとめ:データを「ためる」から「活かす」へ

実施例の準備は、単なる報告ではなく「権利を強くする設計」です。出願直前ではなく、研究初期から弁理士と相談することで、実施例がサポート・実施可能要件を満たし、強い特許につながります。

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