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組成物特許で「のみ」を入れて後悔しないために|オープンクレームの落とし穴

2026年1月1日 | ブログ

拒絶理由で「開示されているので〇〇の構成だけ」と言われた…そのとき「のみ」を入れていませんか?

組成物の拒絶理由対応で、よくある“詰みパターン”があります。

それは、審査官から「明細書で開示されているのは〇〇の構成だけ」のように指摘されたときに、焦ってクレームへ「のみ」「(AとB)からなる」を入れてしまうケースです。

この一手は一見、特許になる山を越える近道に見えます。しかし組成物では、ここでクレームを閉じると、後の対応が難しくなり、結果として次のようになりがちです。

  • 特許になっても権利範囲が極端に狭い
  • 補正で身動きが取れず、拒絶査定→不服審判まで必要になる
  • 製品実態(微量成分・不純物・添加剤)と合わず、回避されやすい特許になる

そもそも「オープンクレーム/クローズドクレーム」とは

一般に、組成物クレームには大きく次の書き分けがあります。

  • オープンクレーム:「AとBを含む/含有する」…列挙以外の成分が入っても排除しにくい
  • クローズドクレーム:「AとBのみからなる」…列挙以外の成分を原則として排除する方向

実務では「からなる」も、明細書の記載や審査経過によってどこまで閉じるかが争点になり得ます。つまり、言葉だけで自動的に決まるものではなく、文脈で“閉じたクレーム”として扱われると、後戻りが難しくなります。

なぜ組成物で「のみ」を入れると詰みやすいのか

組成物は、現場の製造・品質保証の世界では「完全にそれだけ」という状態が珍しいからです。

  • 製造由来の不純物、残溶媒
  • 安定化剤、pH調整剤、分散剤などの添加剤
  • 微量成分(香料、触媒残り、吸着水など)

ここで「のみ(からなる)」にしてしまうと、製品がクレームから外れる、あるいは競合が微量添加で容易に回避できる、という事態が起きやすくなります。

「のみ」に逃げる前にやるべき順番(ここが最重要)

だからこそ、最初にやるべきは「のみ」ではなく、相違点の棚卸し反論・補正の設計です。

ステップ1:相違点を“成分名以外”も含めて棚卸しする

組成物の差は、成分名だけではありません。たとえば次のどれかで勝てることが多いです。

  • 含有量範囲(Aが0.1〜5 wt% など)
  • 比率(A/Bが1〜3 など)
  • 物性・指標(粘度、粒径、酸価、分子量分布、Tg など)
  • 状態(塩、結晶形、被覆、分散状態)
  • 製造条件で決まる構造(in situ生成、架橋、表面処理)

同時に引用発明と本願発明の対比表を作成するのもお勧めです。

なぜなら、この作業中に、引用発明と本願発明の根本的な違いに気づくことが多いのです。

ステップ2:引用発明の認定のズレを見つける

「違いは〇〇だけ」という指摘は、実は引用文献の認定が広く読まれていることが原因のことがあります。

引用文献にそこまで書いていない/当業者はそう理解しない、を丁寧に当てに行くと、補正を大きくせずに進められる場合があります。

ステップ3:効果で“違いの意味”を立てる(組成物はここが強い)

組成物は、構成差だけでなく効果が通り道になります。

  • 安定性(沈殿・変色・分解)
  • 分散性、皮膜性能、耐久性
  • 触感・泡質などの官能特性
  • 電気特性・信頼性(材料系)

「その構成である理由」が立つと、相違点が“ただの違い”から“意味のある違い”になり、進歩性の説得力が上がります。

ステップ4:補正は“オープンのまま”強くする

いきなり「のみ」で閉じず、まずは次の選択肢を検討します。

  • 必須成分の明確化(構成の芯を立てる)
  • 範囲・比率・物性で限定(逃げ道を残しつつ強くする)
  • 従属項で段階的に限定(審査対応の余地を確保)

この「オープンのまま強くする」具体策は、別記事で5つに整理しています:組成物の特許を強くする5つのポイント

補正には「新規事項」などの制約もあるため、最初から“戻れない補正”に行かないことが重要です。

ステップ5:それでも必要なら「のみ」は最終手段

“切る”のが有効なケースもあります。たとえば、発明の本質が「添加剤を入れないこと」にある場合などです。

ただしその場合でも、製品実態(不純物・微量成分)と整合するか、そして明細書上閉じる根拠が十分かを確認してからにします。

すぐ使えるチェックリスト:『のみ』を入れる前に5分で確認

  • □ 「のみ」にしたら、実際の配合(不純物・添加剤)で外れないか?
  • □ 相違点は本当に“成分名だけ”か?(範囲・比率・物性・状態の候補は?)
  • □ 引用文献は本当にそこまで書いているか?(読みすぎていないか?)
  • □ 効果は比較例設計で立つか?(差が見えるデータになっているか?)
  • □ 従属項で段階的に落とす設計(保険)はあるか?

まとめ:化学が分かる対応ほど「のみ」に頼らず、強い権利が残る

組成物の拒絶理由対応は、言葉の操作だけで勝てる分野ではありません。

“その限定は化学的に意味があるか/製品で守れるか/回避されないか”を見極めたうえで、反論→オープンのまま強化→最後に必要なら閉じる、この順番で進めると、特許になった後も使える権利が残りやすくなります。

ご相談

もし今、拒絶理由で「違いは〇〇だけ」と言われ、補正方針に迷っている場合は、「のみ」を入れる前に一度整理するのがおすすめです。

当事務所では、(1)相違点の棚卸し →(2)反論ストーリー →(3)権利範囲が極端に狭くならない補正案、まで一緒に組み立てます。

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